同じ授業を受けても、すぐに内容をつかめる人がいる一方で、 真面目に聞いているのに理解できない人もいます。
この差の一つは、受け取った情報をどこまで分解し、再構成できたかにあります。 「地頭」や「才能」の差だけではありません。
理解できた人は、受け取った情報をそのまま覚えているのではなく、 重要な要素を選び、それぞれを関係の中へ位置づけています。
理解の原理「分解と再構成」
分解と再構成とは以下です。
- 分解:情報の中から重要な要素を選び、中心と細部を見分ける
- 再構成:選んだ要素の関係を捉え、全体の中へ位置づけ直す
分解とは、情報をむやみに細かくすることではありません。 何に注目し、何をいったん脇へ置くかを選ぶことです。
まず、分解と再構成の働きを、景色を覚える場面で考えてみます。 同じ景色を見ていて細かいところまで覚えている人がいる一方で何も覚えていない人がいますよね。 この差がなぜ生じるのでしょうか。
まず、大きい建物のような最も目立つものが目に入ります。 他にも目立つものがいくつかあります。 こうやってその景色の構成要素を順々に把握していくことが「分解」です。
次に、最も目立つ要素と他の要素の位置関係を把握していきます。 それに従って要素を配置していくことで景色を頭の中に再現します。 これが「再構成」です。
景色をよく覚えている人はこれを細部まで繰り返した人です。 逆にあまり覚えていない人は漠然としか景色を見ていなかった人です。
同じ情報を受け取っても理解度に差が生じる理由の一つは、「分解」と「再構成」がどこまで行われたかの違いです。 18世紀の哲学者コンディヤックは、このように対象を分解し、再構成することを「分析」と呼びました1。
なぜ同じ授業でも理解度に差が出るのか
景色の喩えを勉強に置き換えて、 同じ授業を聴いているのに理解度に差が生じる理由を述べます。
「景色の中の目立つもの」は勉強では何に対応するでしょうか。 それはその学習分野の中で幹に当たるような重要な要素です。 たとえば、
- 数学では、繰り返し登場する基本となるような公式や考え方
- 歴史では、歴史の流れを決定づける重要な出来事
などが挙げられます。
重要な要素を把握することが勉強における「分解」です。
分解で得た要素同士がどのように繋がっているかが「景色における位置関係」に当たります。
たとえば、
- 数学では、ある公式を使って別の公式を証明できる
- 歴史では、あの出来事があったから後にこの出来事が起きた
というような要素を関係づけることが「再構成」です。
「分解」と「再構成」を繰り返すことでその学習分野について理解を深めることができます。
どこが分からないのか分からない
授業を聞いただけで理解できる人は、 何が重要で、それらがどう関連しているのかを、頭の中で分解し再構成しています。
しかし、初めて学ぶ内容について、 何が重要で、何と何が関係しているのかを見つけるのは簡単ではありません。
どの情報が重要かを判断できなければ、授業の内容を理解するのは困難です。
さらに、分解と再構成は頭の中で起こるため、 本人にも周囲にも、どこで理解が止まったのかが見えにくいという問題があります。
自分の言葉で書き出す
そこで、頭の中だけで行っていた分解と再構成をメモへ書き出すことで、 この過程を目に見える作業へ変えられます。
これは、教科書の表現をただ言い換えることではありません。
自分の言葉で説明しようとすると、
- 何が重要なのか
- どの情報を残すのか
- 要素同士がどう繋がるのか
- どこから説明できないのか
を考えなければなりません。
ただ聞いたり書き写したりするだけでは見えなかった理解の過程が、 メモとして外に表れます。
続く実践編では、 「自分の言葉でメモする」ことで、 分解と再構成を具体的な学習作業へ変える方法を説明します。
参考
- 論理学 考える技術の初歩[エティエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック]