理論編では、 理解とは「分解と再構成」であることを説明しました。
実践編では、 教科書を自分の言葉でメモすることで、理解の過程を具体的な作業に変えられることを説明しました。
では、実際にどう書けばよいのでしょうか。
本記事では、私が10年以上読書する中で得たメモの書式を用いて、 教科書をメモする例を紹介します。
用語を手掛かりに教科書を読む
教科書には説明が羅列されていて、何をメモすればよいか分からずに戸惑うかもしれません。
そして、場当たり的に気になった記述を写経することに終始してしまいがちかもしれません。 私がそうでした。
しかし、ただの写経では「分解と再構成」になりません。
そこで、用語に着目すると良いです。 用語は、その分野を構成する要素を見つけるための手掛かりになるからです。 私は、本文だけでなく、図表や欄外の注釈に登場する用語も、まずはすべて拾います。
見つけた用語は、次の形で書きます。
用語[, 別名1, 別名2, ...]: 自分の言葉による説明
別名がある場合は、カンマで区切って並べます。
まだ説明できない用語は、空欄のまま残しても構いません。 空欄は、その用語をまだ説明できないことを示すからです。
高校「情報Ⅰ」のメモ例
以下は実教出版の高校「情報Ⅰ」の教科書の私のメモの一部です。 用語とその説明による一行を基本単位として書いています。 用語以外の書式も含まれていますが、追って説明します。
## 01. 情報と情報社会
データ: 事実や事柄を表す記号
情報: 人間が判断し、行動できるように意味を付加した{データ}
残存性: モノとは違って、譲渡してもなくならずに手元に残る
複製性: デジタル{情報}は劣化なしに短時間で大量にコピーできる
伝播性: モノよりも短時間で広く伝えられる
-> 一度流出した{情報}は完全に削除することが困難
-> 忘れられる権利: ネット上の過去情報を削除できる権利
EUが支持している
知識: 問題解決に利用できるように整理・蓄積した{情報}
知恵: {知識}を活用する力
基本書式
「情報Ⅰ」のメモ例にある基本的な書式を説明します。
一つの内容を一行で書く「単文」
メモは、一行に一つの意味を書きます。 これがメモの最小単位であり、「単文」と呼んでいます。 単文は60〜70文字以内を目安にします。 単文に付加した名前が上述の「用語」でした。
単文が長くなる場合は、複数の内容が混ざっていないかを確認し、複数の行へ分けられないか考えます。
短く書けない箇所は、まだ整理できていない部分を見つける手掛かりになります。
用語の埋め込み
用語はブレースで囲んで別の単文に使えます。 「情報Ⅰ」のメモの「情報」には「データ」という用語が埋め込まれています。 同様に、「知識」には「情報」が、「知恵」には「知識」が埋め込まれています。
用語を埋め込んで使い回すことで、明瞭で正確で短く説明を書けます。
定義した用語を別の用語へ埋め込み、さらにその用語を別の説明へ使うこともできます。
このように用語として知識を「分解」し、用語間の繋がりを埋め込みという関係で「再構成」することで、 理解が深まります。
字下げや記号で関係を表す
単文間の関係を表す書式は用語の埋め込み以外にもあります。
- 字下げ: 詳細
<-: 前提や原因->: 結論や結果ex.: 具体例や下位概念xe.: 上位概念<->: 対立する概念
「情報Ⅰ」のメモでは、「情報」の詳細として「残存性」「複製性」「伝播性」が字下げして書いてあります。 これらはデジタル情報の性質なので、「情報」の詳細と判断しました。
また、
-> 一度流出した{情報}は完全に削除することが困難
という箇所は、「情報」の結論として配置しています。 「残存性」「複製性」「伝播性」を持つ情報は一度流出するともはや削除しきることが難しい、 というように読むことができます。
このように、単に単文を羅列するのではなく、 単文を関係づけてメモすることで理解が深まります。
発展的記法
メモが長くなってから、次の記法も使います。 最初から覚える必要はありません。
参照
すでに定義した用語を別の場所で参照するときは、バッククオートで囲みます。
X: ここでXを定義する
...
`X`
-> Y: 別の場所でXとYの関係を追記する
用語の定義と離れた場所から参照できます。 教科書での用語の登場順を崩さずに単文を追記したいときなどに使います。
見出し
見出しは、メモが教科書のどの章や節に対応するのかを残すために使います。
# 教科書の名前
## 章
### 節
知識自体ではなく、その知識がどのような流れで登場したのかという文脈を残せます。
補助情報
年代などの補足は、用語の説明から一段下げて書きます。
関ケ原の戦い
when. 1600
何が主な説明で、何が補足なのかを分けることで、 メモの見通しを保ちます。
メモは使いながら書き直す
教科書を一度読んだだけでは、十分なメモは作れません。
教科書を読み進めたり、授業を受けたり、問題を解いたりする中で、 説明の不足や間違いに気づいたら書き直すことで改善します。
後藤IT塾では、このメモを講師も確認します。 講師のレビューを受けて書き直すことで、 メモと理解の両方を育てていきます。
結び
本記事で紹介した基本は、次の三つです。
- 用語を手掛かりに、一つの内容を一行で書く
- 用語に自分の言葉で説明を与える
- 字下げや記号、埋め込みで、用語同士の関係を表す
書式を守ったきれいなメモを作ることが目的ではありません。 大切なのは、教科書の中から要素を拾い、 自分の言葉で説明し、知識の繋がりを組み直すことです。
この書式に辿り着くまでの試行錯誤についても、 別の記事で紹介しています。