理論編では、 理解とは「分解と再構成」であり、 その度合いの違いによって同じ勉強をしていても理解度に差が生じることを説明しました。
実践編では、 自分の言葉でメモすることは強制的に「分解と再構成」するための規律であることを説明しました。
しかし、具体的にどうメモを取るべきかという細部について書いていませんでした。 本記事(ノウハウ編)では、とある「メモの書式」を紹介します。 これは私が10年以上読書する中で辿り着いた方法です。
メモの書式
まずはこの書式に沿った私のメモの実例を載せます。 「分解と再構成」に関するアイデアを得た本のメモです。 どんな雰囲気なのかだけ見てください。
自然: 本性と訳す方が自然かも
ホップズ、ロック、ルソーなどに共通の近代の経験哲学のキーワード
人は等しく五感を持つのに知識差が生じる
感覚印象: 心に現れた外的対象の{表象}
触覚だけが外的実在を捉えられる
<- ジョージ・バークリー: 視覚の距離や奥行きの知覚は触覚由来 と提唱
when 1685 ~ 1753
<- ジョン・ロック: 物の性質は第一性質とその派生の第二性質の2つ と提唱
when 1632 ~ 1704
機会原因: 実在を感じるきっかけ
見るのは電磁波を介して{感覚印象}が生じているだけであり実在そのものではない
「機会」は偶然というニュアンス
見ているものは夢かもしれない(デカルトの方法的懐疑)
<- ニコラ・ド・マルブランジュ: デカルト派の哲学者
when. 1638 ~ 1715
{欲求}は動物の身体構造ごとに固有
{自然}のレッスン: {自然}な{欲求}による速く正確な学習能力
失敗すると{不満}を警告する
成功すると満足・快楽を与える
-> 失敗しても{自然}からの警告がない判断から誤りが始まる
ex. 好奇心は失敗にも快楽を与える
ex. 快不快のフィードバックを待たない大急ぎな判断
発生論的説明: 幼児の学習を観察することでのみ{自然のレッスン}を理解できる
-> 学習について天才の秘訣を{自然}の外に探したり仮定を設けたりするのは不毛
風景全体を漠然と見るのを繰り返しても細部を捉えられない
分解: 全体の中で目立つものから順に目を向けるのが{自然}
-> 知識は1つずつ獲得するしかない
-> 再構成: 細部を目立つものに対して位置づけることで把握する
-> 全体が見えなければ細部を理解できない
分析: 全体を{分解}して{再構成}することで全体と細部を同時に捉えられるようになること
哲学者に限らず人は{自然}にやっている
人は技術者や論理学者になろうとする前にその資質を既に持っている
実践編で載せた例 もこれと同じ書式に従って書きました。
余談ですが、載せるメモを探す中で書き直したい欲求に駆られました。 完璧にメモする難しさを改めて実感しました。
メモの書式の構成要素
メモの雰囲気をお伝えした。 では、メモの書式に関しての詳しい話をします。
ノートの書式は主に7つの要素から構成されます。
1. 単文: 1行で1つの意味を簡潔に書く
メモは1行単位で書きます。 これを「単文」と私は呼んでいて、60~70文字以下で短く書きます。
この文字数を超えてしまうのは「分解」ができていないサインです。 内容を分割して複数行に分けれないか考えます。
さらに、自分の言葉で言い換えを探して平易で短い表現に直します。 そのまま書き写すのではなく、自分の言葉で簡潔に表現する方法を探す。 これが「分解」の肝であり、実践編 でも指摘した非常に重要なポイントです。
文字数の制約は理解せずに書き写すことを防止する規律です。 理解しているならばキレよく単文を書けるはずです。
2. 用語: 単文に対する名前
名前とその説明となる単文の組を以下のように1行で書きます。
name: xxxxxxxx
name1, name2, name3: xxxxxxxx
コロン(:)の左側が名前で、右側がそれを説明する単文です。 カンマ(,)で区切って複数名を書くこともあります。
キーワードが与えられている概念は重要なはずです。 重要だから名前が与えられたはずだからです。
この書式はキーワードに対するアンテナです。 名前を拠り所にすることで学習内容の繋がりがよく見えるようになります。
3. 用語の埋め込み
こうして定義された用語をブレース({})で囲んで単文に埋め込みます。 用語に埋め込むこともあります。
端末: 情報を入力したり出力したりする機械
アプリ: {端末}の上で動くソフトウェア
SNS, Social Network Service: 人と交流するための{アプリ}
X, Twitter: 短文投稿型の{SNS}
同じ内容が繰り返された文は読みにくいですよね。 用語の埋め込みによって単文を再利用して重複を排除できます。
さらに、用語を埋め込んだ単文を新たな用語として定義し、 それをさらに埋め込むこともできます。 そうすることでより短い単文の中に多くの意味を圧縮できます。
参考書にない用語であっても、 繰り返し出てくる概念に自分で名前をつけることでより簡潔に表現できる場合もあります。
4. 単文関係
単文の羅列は箇条書きに近いものです。 しかし、知識は単独で存在するわけではありません。 「なぜそうなるのか」「何の具体例なのか」「何と対立する考えなのか」 といった関係を持っています。
単文の羅列は「分解」で得た要素の一覧に過ぎません。 それらの要素を関係づけて整理することが「再構成」です。 理論編で述べた通り、 これらの両輪によって理解が形成されます。
そこで私は、単文同士の関係を 字下げ(インデント)や記号で表現しています。
代表的なものを挙げると次のようになります。
- ただの字下げ: 詳細
- <-: 前提や原因
- ->: 結論や結果
- ex.: example(具体例や下位概念)
- xe.: ex.の逆(一般例や上位概念)
- <->: 対義語や対立関係
ちょっと雰囲気を書いてみると以下のようになります。 階層を複数回下げることもできます。
民主主義
<- 市民の政治参加(民主主義の前提)
-> 権力の集中を防ぐ(民主主義の結果)
哺乳類
お乳を飲んで成長する(詳細1)
卵ではなく産道から生まれる(詳細2)
ex. 犬
ex. 柴犬
ex. 猫
xe. 動物(より一般的な概念)
善
<-> 悪
-> 悪の結果
これを普通の文章で書いた場合をイメージしてみてください。 先頭から順に読み解いて概念間の関係を理解する必要があります。
一方、この書式では「何が要素なのか」と「それらがどう繋がっているのか」を一目で把握できます。
教科書などの普通の文章から単文を抽出し、それらを関係づけて配置する。 まさに「分解と再構成」です。 この書式は、その過程を補助するためのものです。
5. 引用
引用とは、既に定義した用語を参照するための記法です。 用語をバッククオート(``)で囲って表現します。
引用によって、自由な場所で単文関係を追記できます。 これの何が嬉しいかというと、 例えば、 階層が深くなった場所に追記していくと見にくくなるのを防止できます。
aaa
bbb
...
X: xxxx
-> Y: 階層が深くなってきてそろそろ見づらい
↓引用で改善
aaa
bbb
...
X: xxxx
`X`
-> Y: 階層が深くなってきてそろそろ見づらい
また、参考文献の記述の順序を保って単文関係を追記するためにも使えます。
参考文献には、
- X,Y,Zの順に概念が書かれていた
- XとZが関係している
とします。
(引用なし)
X: xxx
-> Z: zzz
...
Y: yyy
...
※ YよりもZの方が先に書かざるを得ずに参考文献の順番が崩れる
(引用あり)
X: xxx
...
Y: yyy
...
`X`
-> Z: zzz
...
参考文献の文脈を壊さずに単文を再接続するための記法が引用です。
6. 見出し
見出しは単文が教科書などの参考文献のどこから得たかを区分けします。
知識そのものではなく、 その知識がどのような流れで登場したのかという文脈を保存する役割があります。
シャープ(#)を続けた回数で見出しの階層を表現します。
# 見出し1 参考文献のタイトル
aaa
## 見出し2-1 以下は章節の階層
bbb
ccc
### 見出し3
###### 見出し6
## 見出し2-2
...
これは必須ではありません。 いちいち見出しで分けたくないのなら使わなくても構いません。
また、先程の引用は見出しの配下にある単文を参照したい時にも使えます。
...
## 見出し1
...
X: xxx
...
## 見出し2
...
yyy
<- `X`
...
7. 補助情報
以上がメモを構成する骨子でした。 最後はおまけみたいなものです。
単文の日時などの強調しておきたい情報を字下げして書きます。
鎌倉幕府成立
when. 1185
関ケ原の戦い
when. 1600
単文では概念の本質を書きます。 補助情報は重要ではあるものの本質ではありません。 何が主役で何が補足なのかを分けて配置する。 これもまた「分解と再構成」の一種です。 その結果、メモの見通しがよくなり、年号などの補助情報を探しやすくなります。
結び
本記事では、 「分解と再構成」を駆動するための自分の言葉によるメモの書式を紹介しました。
単文で要素を抽出し、 用語によって名前を与え、 用語を埋め込みながら知識を圧縮し、 単文同士を関係づけて配置する。
もちろん、この書式をそのまま真似する必要はありません。 大切なのは書式そのものではなく、 自分の言葉で知識を分解・再構成することです。
本記事が知識整理のヒントになれば幸いです。