理論編にて 「理解とは分解と再構成」や 「同じ情報で理解度に差が生まれる理由」 などを説明しました。 本記事はその実践編です。

IT業界には学んだことを記事にして発信したり、 誰が見ても再現できるように「ドキュメント(仕様書や手順書)」に残したりする文化があります。

本記事で提案する勉強方法はこれと全く同じです。 「学んだことを自分の言葉でメモする」という言語化を徹底することです。

何の新規性もないツマラナイ内容に見えるかもしれません。 しかし、いわゆる「地頭が良い子」は、授業を聴いた瞬間にこのプロセスを脳内で無意識にやっています。 それを誰でも再現できる仕組みとして習慣づけることで地頭や才能に関係なく成績を向上させる事ができます。

自分の言葉でメモすることで知識を咀嚼する

「地頭の良い子」は授業で聴いた内容を容易に噛み砕いて「要するにこういうことだよね」と即座に理解できてしまいます。 羨ましいです。

普通はそんなことできません。 特に新しく見聞きした内容を分解するのは難しく、 要点がどこなのか分からず聞き流してしまいがちです。

そこで提案したいのが冒頭でお話した「自分の言葉でメモする」という方法です。 IT業界のドキュメント文化に因んで、これを「ドキュメント化」と呼ぶことにします。

まあどう呼ぼうが自分の言葉でメモすることに変わりありません。 ただ、教科書の記述をそのまま書き写すのはNGということは強調しておきます。 そのまま書き写すのは「分解」ではありません。 どこが重要なのか分からずにマーカーで線を引きまくることも同様にNGです。

自分の言葉で「要するにどういうことか」をまとめるのです。 何が「目立つ」ものなのかを積極的に探して取捨選択します。 こうして厳選した要素をうまく配置し関連付けながらメモを増やしていきます。

自分の言葉でメモするためには「一度噛み砕いてそれを配置し直す」必要があります。 なのでドキュメント化によって「分解」と「再構成」のプロセスが強要されます。 これを実践することで「地頭の良い子」が無意識にやっている理解のプロセスを誰でも再現できます。

ドキュメント化はそのブラックボックスな過程をより具体的な手順にしたものであり、 誰にでも再現できる型なのです。

言語化(ドキュメント化)の実例を少々

漠然とした話が続いているので、ドキュメント化を少し実演してみます。 内容を追う必要はありません。 取捨選択と圧縮率に注目してください。

手元にあった私の高校数学の教科書1を抜粋します。

上で得られた関係式 \( y = 20 - 6x \) において、\( 0 \leqq x \leqq 10\) の範囲での\(x\)の 値を定めると、それに対応して、\(y\)の値がただ1つ定まる。

このように、2つの変数\(x, y\)があって、 \(x\)の値を定めるとそれに対応して\(y\)の値がただ1つ定まる時、 \(y\)は\(x\)の関数であるという。

\(y\)が\(x\)の関数であることを文字\(f\)などを用いて \( y = f(x) \) と表す。

また、この関数を、単に関数 \(f(x)\) ともいう。

関数 \( y = f(x) \) において、 \(x\) の値が \(a\) のとき、 それに対応して定まる \(y\) の値を \(f(a)\) と書き、 これを関数 \(f(x)\) の \( x = a\)における値という。

そこから抽出したメモがたとえばこのような感じになります。 一要素を一行に簡潔にまとめます。

関数: 入力に対して出力が唯一定まる対応関係
関数の値: ある具体的な入力に対する出力

具体例を捨てて、要するに本質は何かを探す意識が大事です。 何となく読んだり聴くのではなく、積極的に知識を加工しようとする試行錯誤の中で理解が形成されるのです。

自分の言葉に直すことで分からないことが見えてくる言語化の効用

この調子でメモの行数を増やしていきます。 すると、関連づいていない項目が見つかるかもしれません。 ただ羅列が増えたという感じです。 これは「再構成」が足りていないことのサインです。 メモすべき要素を見逃しているのは「分解」の不備のサインです。

こういうことは自分で手を動かして書いてみることではじめて見えてきます。 一読しただけ、授業を聴いただけでは理解できないのは当たり前です。

こうして一通りのメモを終える頃には教科書を咀嚼できているはずです。 少なくとも大まかには理解できているはずです。

しかし、それで完成ではありません。 再度教科書やメモを見返してみると「もっとこう書けばよかった」という改善点が見えてくるでしょう。

当たり前です。 教科書を一周して全体像を掴んだことでどこが「目立つ」要素だったのか以前よりよく分かるようになっているからです。

このように、自分の理解を言語化して目に見える文にすることには

  • 分解と再構成の過程を強制する
  • 自分の理解を振り返って改善点を探すことができる

などの効用があります。

宿題をしても塾に通っても成績が伸びない理由と対策

では、「宿題をこなしているのに」「塾に通っているのに」成績が伸びないのはなぜなのか。 その理由はもう明らかですよね。 その子自らの手で「分解と再構成」ができていないからです。

世の中には、よく整理された分かりやすいテキストや授業があふれています。 それらを見聞きすると、その場では分かった気になれますし、問題が解ける気がしてきます。 実際にそれを即座に理解してサクサク成績を上げる「地頭がいい子」もいるでしょう。

しかし、そのよく整理されたテキストを作る過程こそが「分解と再構成」であり、最も勉強になる部分なのです。 そこを先生が代わりにやってしまっているのがよくできたテキスト、授業です。

そこで、自らの言葉でテキストを作成することが本記事で提案しているドキュメント化です。 自ら手を動かして理解を掴み取る。 ここにしか、成績を上げる道はありません。

一方、宿題も手を動かして自分の理解を確認する能動的作業です。 なのでこれで間に合う人もいます。 なのに宿題をこなしても成績が伸びないのはなぜか。

それは、解くための「武器(理解)」が頭の中に揃っていないのに 義務的に宿題をこなそうとして「作業」になってしまっているからです。

教科書を理解した上で宿題を解く、 あるいは宿題で分からない箇所に出会ったときに教科書に立ち返る、 という両輪が必要なのです。

プロの見事な授業を眺めてなんとなく板書するだけではその内容が脳を素通りしてしまいがちです。 また、ただ枠を埋めて宿題をやっつけるのでは理解が促進されません。

だからこそ、まずは教科書を自分の言葉でドキュメント化して「武器」を揃える。 その上で、宿題を使ってその武器が使えるかをテストする。 この順番で勉強に取り組むことで伸び悩みを確実に打破することができます。

自走力を高める: 「分からない」から「ここが分からない」へ

「ドキュメント化は誰にでも再現できる理解のための型」であると説明してきました。

ドキュメント化は脳を酷使する非常に大変なプロセスです。 容易ではありません。 生徒は「めんどくさい、普通に教えてよ」と反発する事もあるでしょう。

しかし、理解はその子自身のものです。 「分解と再構成」を肩代わりすることはできません。 自分で手を動かして自分で理解するしかありません。

塾で「分からない」と安易に質問する子を多く見ました。 類題でも同様に「分からない」と質問を繰り返すばかりでした。 自身の手で「分解と再構成」をしない限りはこの状態は改善しません。

対して、「ここがこう分からない」みたいな具体的な質問ができる生徒は 理解が速く、成績を上げていました。

「どこがどう分からない」と具体的に質問できることが重要です。 これは「分解と再構成」をする中で自身で発見するものです。

具体的な質問ができる段階にあるなら、 先生に聞かなくても教科書を確認したり、 ネットで調べたりして自己解決できる可能性が高くなります。

こういう具体的な疑問を見つける再現的な方法がドキュメント化なのです。 これは定期テストや受験だけでなく、一生使える自己解決スキルです。

結び

続くノウハウ編では、 このドキュメント化を私自身のPCの中でどうシステム化しているのか、 具体的なインデントのルールや『言葉の定義の使い回し(チャンク化)』の仕様を具体的に開示します。

おまけ: 当塾(後藤IT塾)の指導方針

当塾では、この「分解と再構成(ドキュメント化)」をベースにした学習指導を徹底します。 一人ではどうしても「めんどくさい」と妥協してしまいがちな言語化のプロセスを、 ITエンジニアである塾長がマンツーマンで精密に補助し、 一生モノの「自走力」へと育て上げます。

「うちの子にも、この本質的な勉強の型を身につけさせたい」と思われた鈴鹿・四日市の親御様は、 ぜひ一度お気軽にご相談ください

参考

  1. 改訂版 数学1 [平成18年度]