理論編にて 「理解とは分解と再構成」や 「同じ情報で理解度に差が生まれる理由」 などを説明しました。 本記事はその実践編です。
IT業界では、学んだことを記事にしたり、仕様書として記録したりする文化があります。
勉強でも、教科書をそのまま写すのではなく、自分の言葉で整理して記録することが重要です。
何の新規性もないツマラナイ内容に見えるかもしれません。 しかし、書こうとすると、要点を選び、知識同士を関係づけ、自分が説明できない部分を確かめる必要が生じます。 頭の中だけでは見えにくい理解の過程を、具体的な作業に変えられるのです。
自分の言葉でメモすることで知識を咀嚼する
知識がよく整理されている人は、授業で聞いた内容を「要するにこういうことだ」と素早く噛み砕けます。 羨ましいですよね。
特に、初めて学ぶ内容を分解して再構成するのは簡単ではありません。
そこで提案したいのが冒頭でお話した「自分の言葉でメモする」という方法です。
ただ、教科書の記述をそのまま書き写すのはNGということは強調しておきます。 そのまま書き写すのは「分解」ではありません。 マーカーで線を引きまくることも同様にNGです。
自分の言葉で「要するにどういうことか」をまとめるのです。 何が「目立つ」ものなのかを積極的に探して取捨選択します。 こうして厳選した要素をうまく配置し関連付けてメモにします。
自分の言葉で書こうとすると、一度内容を噛み砕き、配置し直さなければなりません。 この作業が「分解」と「再構成」を強制します。
メモによる言語化の実例を少々
具体的にメモを実演してみます。 内容を追う必要はありません。 取捨選択と圧縮率に注目してください。
手元にあった私の高校数学の教科書1を抜粋します。
上で得られた関係式 \( y = 20 - 6x \) において、\( 0 \leqq x \leqq 10\) の範囲での\(x\)の 値を定めると、それに対応して、\(y\)の値がただ1つ定まる。
このように、2つの変数\(x, y\)があって、 \(x\)の値を定めるとそれに対応して\(y\)の値がただ1つ定まる時、 \(y\)は\(x\)の関数であるという。
\(y\)が\(x\)の関数であることを文字\(f\)などを用いて \( y = f(x) \) と表す。
また、この関数を、単に関数 \(f(x)\) ともいう。
関数 \( y = f(x) \) において、 \(x\) の値が \(a\) のとき、 それに対応して定まる \(y\) の値を \(f(a)\) と書き、 これを関数 \(f(x)\) の \( x = a\)における値という。
そこから抽出したメモがたとえばこのような感じになります。 一要素を一行に簡潔にまとめます。
関数: 入力に対して出力が一つに定まる対応関係
関数の値: ある具体的な入力に対する出力
何となく読んだり聞いたりするのではなく、要するに本質は何かを探す意識が大事です。 積極的に知識を加工しようとする試行錯誤の中で理解が形成されるのです。
言語化が理解を磨き上げる
一読しただけ、授業を聞いただけで十分に理解できるとは限りません。 自分で手を動かして書いてみることではじめて理解の不備が見えてきます。
メモすべき要素を見逃しているのは「分解」の不備のサインです。 また、項目が関連づいていないのは「再構成」が不十分なサインです。
教科書を読みながら一通りメモを作り終えた頃には、内容を大まかに理解できているはずです。 さらに、教科書やメモを見返してみると「もっとこう書けばよかった」という改善点が見えてくるでしょう。
自分の理解を言語化して目に見える文にすることには、
- 分解と再構成の過程を避けて通れなくする
- 自分の理解を振り返って改善点を探すことができる
などの効用があります。
宿題をしても塾に通っても成績が伸びない理由と対策
よく整理されたテキストや授業は、分解と再構成の結果を分かりやすく示してくれます。 しかし、それを受け取るだけでは、生徒自身が分解と再構成をしたことにはなりません。 自分の言葉でメモを作り、理解を組み立て直すことが重要です。
宿題も手を動かして自分の理解を確認する能動的作業です。 なのに宿題をこなしても成績が伸びないのはなぜか。
それは、解くための「武器(理解)」が頭の中に揃っていないのに 義務的に宿題をこなそうとして「作業」になってしまっているからです。
だからこそ、まずは教科書を自分の言葉でメモして「武器」を揃える。 その上で、宿題を使ってその武器が使えるかをテストする。 宿題が解けなければ、教科書に立ち返る。 この往復によって、問題を解くだけでは見つけにくい理解不足を改善できます。
自走力を高める: 「分からない」から「ここが分からない」へ
自分の言葉でメモすることは、頭を使う負荷の高い作業です。 容易ではありません。 生徒は「めんどくさい、普通に教えてよ」と反発する事もあるでしょう。
しかし、理解はその子自身のものです。 「分解と再構成」を完全に肩代わりすることはできません。 本人の手で要点や関係を整理する必要があります。
塾で、どこが分からないのか整理できないまま「分からない」と質問する子を多く見ました。 類題でも同様に「分からない」と質問を繰り返すばかりでした。
対して、「ここがこう分からない」みたいな具体的な質問ができる生徒は 理解が速く、成績を上げていました。
「この部分が分からない」 「こういう理解ではダメか」 というように、具体的に質問できることが重要です。
具体的な質問ができれば、 教科書を確認する、 学校の先生に質問する、 ネットで調べるなど、次の行動を自分で選びやすくなります。
こうした具体的な疑問は、自分で理解しようとする中で見つかります。 そのための再現的な方法が「自分の言葉で書く」ことです。
結び
続くノウハウ編では、 具体的なメモの書式や、 言葉の定義を使い回して知識を整理する方法を紹介します。
参考
- 改訂版 数学1 [平成18年度]