本塾の基本的な指導方針は

  • 教科書を自分の言葉でまとめる
  • そのまとめを参照して問題を解くことで理解を確認する

を繰り返すことです。

教科書のドキュメント化

理解とは「分解」と「再構成」によって為されます1。 教科書を読んで 自分の言葉 で説明し直してメモする事を「ドキュメント化」と呼ぶことにします。

真の理解に至るためにはこの過程を経ることがマストです。 優れた授業を受けて理解できた気になっても、いざとなった時に問題が解けない事はあるあるではないでしょうか。 自分の言葉で説明を試みることは理解のテストになります。 そこで本塾では教科書のドキュメント化を徹底します。

理解の手順 分析の構造

自分の言葉でまとめ直すことが重要なのは それが理解する過程(分析)そのものだからです。

理解・分析は以下の2つの手順で構成されます。

  1. 分解:雑然としたインプットから目立つものとそれに従属する細部の構造を見出す
  2. 再構成:分解で得た構成要素を組み直す

例えば、なにかしらの機械の仕組みや概念を理解したければ、 それをバラバラに分解した後に元に戻せばよい。 どのような構成要素があるのかとそれらの組み合わせ方を把握する事が分析です。

メモを取らない読みっぱなしで理解が浅くなるのは、分解・再構成がハッキリ意識されないからです。 読んだ内容の中で心に響いた部分、 重要だと思った部分を探し出し(分解)、 それを自らの言葉で書き直すこと(再構成)をしなければなりません。

ドキュメント化の例

手元にあった私の高校数学の教科書2の内容を一部引用します。

上で得られた関係式 \( y = 20 - 6x \) において、\( 0 <= x <= 10\) の範囲での\(x\)の 値を定めると、それに対応して、\(y\)の値がただ1つ定まる。

このように、2つの変数\(x, y\)があって、 \(x\)の値を定めるとそれに対応して\(y\)の値がただ1つ定まる時、 \(y\)は\(x\)の関数であるという。

\(y\)が\(x\)の関数であることを文字\(f\)などを用いて \( y = f(x) \) と表す。

また、この関数を、単に関数 \(f(x)\) ともいう。

関数 \( y = f(x) \) において、 \(x\) の値が \(a\) のとき、 それに対応して定まる \(y\) の値を \(f(a)\) と書き、 これを関数 \(f(x)\) の \( x = a\)における値という。

この教科書の説明を自分の言葉でまとめると、例えば以下になります。

関数: 入力に対して出力が唯一定まる対応関係
関数の値: ある具体的な入力に対する出力

何が説明されているのか。 用語とその説明などを自分の言葉で簡潔にまとめていきます。 どうまとめるのか、メモせず捨てる内容はどれか、などを自分の頭で考える事が大事です。 この過程が「分解」と「再構成」です。

これを教科書全体で繰り返し、自分の言葉で再構成して自分専用の索引が完成する頃には、 教科書を咀嚼できています。

学校や塾で成績が伸びない理由

学校や塾などで先生に教えてもらったり、 授業を受けたりしても理解できずに成績や点数が伸びない原因は この「分解」と「再構成」を先生が代わりにやってしまっているからです。

先生の分かりやすい説明を聞いて、先生と類題を一緒に解いてみる。 こうしたアプローチを重ねても限界があります。

理解は生徒のものです。生徒自身が手を動かして能動的に掴むしかありません。 なので本塾では生徒自らによる「教科書のドキュメント化」を重視します。

正直、これは難しいプロセスです。 私は生徒自身による整理を精一杯補助しますが、 慣れるまではきついかもしれません。 生徒は「めんどくさい、普通に教えてよ」と反発する事もあるでしょう。 しかし、この理解の方法を身につけない限り、生徒の成績は上げられません。

自走力を高める: 「分からない」から「ここが分からない」へ

また、「教科書のドキュメント化」は言語化の訓練になります。

「分からない」と安易に質問する子を多く見ました。 類題でも同様に「分からない」と質問を繰り返すばかりでした。 自身の手で「分解」と「再構成」をしない限りはこの状態は改善しません。

対して、「ここがこう分からない」みたいな具体的な質問ができる生徒は 理解が速く、成績を上げていました。

具体的な質問ができる生徒ならば、先生に聞かなくても教科書を確認したり、 ネットで調べたりして自己解決できる可能性が高くなります。

これは定期テストや受験だけでなく、一生使える自己解決スキルです。

ドキュメントによる理解のテスト

基本的にはあらゆる問題は教科書の内容を用いて解くことができるはずです。 問題を解くための武器は自作教科書ドキュメントに揃っているはずです。 ドキュメントを参照して問題を解けるか確認する事は解像度の高い理解度のテストになります。

問題を解く時に使えるものが自作ドキュメントに見つからない場合、

  • 自分の言葉による整理に失敗した
  • メモすべき内容を見逃した、または捨ててしまった

等の失敗があったはずです。

自作ドキュメントを用いて問題集を解くことはテキストとして表現された自身の理解 を改善する具体的なフィードバックとなります。

ドキュメント化は理解のためのフレームワーク

勉強が得意な生徒ならば、 与えられた宿題を漠然と消化してテストに臨むことを繰り返す普通のスタイルで十分かもしれません。 しかし、それはその生徒が脳内で「分解」と「再構成」を自然とできているからです。

「教科書のドキュメント化」とはそのブラックボックスなプロセスを誰にでも再現可能にする型です。 勉強という漠然としたものを、誰でも取り組める「具体的で小さなステップ」に分解します。

  • 教科書を読む + 自分の言葉でメモする
    • ただ眺めるのではなく、自分の言葉に直して書き出すことで「本当に理解できているか」がその場でわかります。
  • そのメモだけを見て問題を解く
    • テスト本番で頼れるのは自分の知識だけです。「作ったメモを見て解けるか」を試すことで、その知識が「使えるレベル」になっているかを確かめます。
  • 解けなかったら、メモを書き直す
    • 「わかったつもり」だった場所が見つかるチャンスです。メモを補強することで、次は確実に解けるように知識を整えていきます。

参考

  1. 論理学 考える技術の初歩[エティエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック]
  2. 改訂版 数学1 [平成18年度]