本記事ではIT業界の仕事の進め方を学校の勉強に応用する話をします。
まずは従来的な塾の問題点について述べます。
授業だけでは学習時間の大半をカバーできない
塾では先生と会う時間は週に1〜2時間程度です。 しかし、学習時間の大半は自宅で一人で勉強している時間です。 つまり、本当に支援が必要なのは授業中ではなく自習中なのです。
さらに、塾の教室に移動する必要もあります。
授業のような指導は人間が場所とタイミングを合わせることで実現します。 なのでこのような指導を「同期指導」と呼ぶことにします。
IT開発では非同期で協力する
一方で、IT業界にはいつでもどこでも働ける自由なイメージがありますよね。 「非同期コミュニケーション」がこの自由さを支えています。
プログラムや設計書などの成果物を共有して、すぐに別の仕事に取り掛かります。 また、好きなタイミングで質問をチャットして回答を待ちつつ仕事に戻ります。
そのうち、相手からフィードバックが返ってきます。 それを切りのいいタイミングなどに仕事に反映します。
このように、非同期コミュニケーションは 待ち時間の空白を減らして効率的に仕事を進めることを可能にします。
こういう効率化を学習指導に持ち込んだものが「非同期指導」です。
非同期指導の利点
非同期指導は多くのオンライン塾で採用されています。
例えば、
- 授業中の人前の質問よりも気軽に質問できる
- 次の授業を待たずに疑問が湧いた瞬間に質問できる
- 質疑応答の記録が残って後から見返せる
といった利点があります。
特に、次の授業を待たずにフィードバックを受けられる点が大きな利点です。
質問対応や課題では見えないもの
上記のような質問対応は生徒が「何が分からないのか」を認識し、 それを言語化できることを前提としています。
しかし、質問ができるのなら既に半分分かっているようなものです。
- 何が分からないのか
- どこで詰まったのか
- 何を質問すれば良いのか
これらを言語化するためには、既にある程度整理された理解が必要だからです。
実際に助けが必要なのは、
- 何が分からないのかすら分からない
- 問題は解けてしまったが理解が曖昧なまま
- 説明を読めば分かる気がするが自分では再現できない
のような状態です。
質問対応や宿題では検知できない学習上の問題が存在するのです。
生徒の理解を観測可能にするドキュメント学習
では、質問として上がってこない理解不足をどう観測すればよいでしょうか。
まずは理解の状態を外に出す必要があります。 そのために有効なのが 「ドキュメント学習」 です。
まあカッコよく「ドキュメント」と言ってますけど、 自分の言葉によってPCメモを書くことで理解を駆動する学習方法です。
「人に教えると自分も学べる」とよく言われるのは以下のような理由があるからです。
- 教えていて詰まるときに自らの理解不足を発見できる
- 教えるためには、自分の言葉を順序よく配列して自分の理解を整理する必要がある
ドキュメント学習では、自分の理解を他人でも分かるような言葉でPCメモを書きます。 これは単なる板書ではなく、教科書を自分なりに再構成するようなメモです。 これは「自分を自分で教える」ことに相当します。
ドキュメントは理解不足を可視化する
このようなメモにはその生徒の理解の状態が表れます。
- どこまで自分の言葉で説明できているのか
- どこで説明が止まっているのか
- どの部分が教科書の丸写しになっているのか
- どの疑問が放置されているのか
こうした情報は単なる質問や宿題では分かりません。
しかし、PCメモとして学習の過程が残っていれば、 講師は
- 説明が途中で止まっている箇所
- 用語の理解が曖昧な箇所
- 丸暗記で済ませている箇所
に気付きやすくなります。
PCメモはインターネットを通じて講師と共有できます。 そのため、授業時間外でも講師が継続的にレビューやフィードバックを行えます。 その上、宿題提出やチャット質問よりも細かい粒度で学習を支援できます。
IT業界の言葉に置き換えると
本記事の指導法をあえてIT用語で表現すると、次のようになります。
| 学習 | IT開発 |
|---|---|
| 教科書 | 仕様書・ゴール定義 |
| 学習項目 | タスク |
| 疑問 | Issue |
| メモ | ドキュメント |
| 学校・授業 | ミーティング |
もちろん、実際の指導でIT用語を持ち出す必要はありません。
結び
授業のような同期指導は重要です。
しかし、学習時間の大半は授業外の自習時間です。 そのため、授業だけでは学習中の疑問や詰まりを十分に拾いきれません。
非同期指導はチャット質問やオンライン提出によって、 次の授業を待たずにフィードバックを得られる仕組みです。
さらに、PCメモを学習ログとして活用すれば、 質問として表現される前の理解の詰まりにも気付きやすくなります。
ドキュメント学習と非同期指導を組み合わせた指導法が「非同期ドキュメント指導」です。
当塾での具体的な運用については、 質問前の「分からない」を支援する仕組み で紹介しています。
IT業界では、「成果物を共有しながら継続的に改善する」仕組みが発達しています。 同じように、学校の勉強でも学習内容をドキュメント化することで、授業時間に閉じない継続的な指導が可能になります。